うんこを漏らした。僕の心は大いに傷ついている。
会社で飲み会があった日、その帰り道に惨事は起きた。
とても楽しかった飲み会。あっという間に過ぎていく時間。
だからこそ気付かなかった。
隠れ潜んでいた便意に。
会の終了と同時に帰途につく僕。緊張から解放された僕に
下痢が「やあ」とやってきた。隣には上司。帰り道は同じ電車。
「うんこに行きたい」
割とシャレにならない便意がお腹にやってきている。上司をおいてトイレに行くわけにはいかない。電車も次を逃すと結構待つ。雑談も全く耳に入ってこない。便意の波が去る。恐らく数分でより大きい波になって戻ってくるだろう。電車は後三分でくる。
① 電車で盛大に漏らす
② 今ここで上司に告げトイレに行く
簡単な二択を迫られた。
上司を待たせてトイレは一時の恥
電車で壮大に下痢は一生の恥
「すいません漏れそうなのでトイレちょっと行ってきます。」
周りに漏れそうなことを悟られないよう慎重かつ丁寧に歩みを進める。すまし顔はこの時のためにある。
トイレに駆け込む。開いていない。一つも。
座して生(空席)を待つか、次の期待(トイレ)に望みをかけるか。
ここが勝負の分かれ目だった。
僕はおろかにも次のトイレを探すことにした
次の波長まではもう余裕がない。お尻の穴は締めつつ全力で向かう。迫りくる波長、そして。 トイレの案内が見えたところで再び波長が来た。冷静な僕の脳は既にトイレに行けるものと踏んで着々と排便の準備を進めている。まだあわてる時間じゃない。まだ慌てる時間じゃない。「イヤなのに…」 そんな同人誌でしか見かけないような台詞がまさか自分に起こるとは。
肛門「もうだめだ」
ちょっと漏れた。
最後の力を振り絞って次のトイレへ駆け込む。空いている。トイレに駆け込むのと同時にズボンとパンツを下げるのと同時に排便をする。 爆発音がトイレに響く。何もかもが終わった。 被害は少なくパンツという薄皮一枚で済んでいた。
しかし重要なのは漏らしたという事実。30にもなって僕は、僕は。
とても惨めな気分になっていると何故かドアが開いた。
「排便」しか頭になかった僕は「施錠」という大事な仕事を忘れていた。
開けたのは良く分からんリーマンだった。すぐすいませんといって閉めたが、果たして姿は見られしまったのだろうか。30のくたびれた男がパンツを拭いている姿を。
そうしてこの上ない情けない気持ちとパンツを握りしめノーパンにスーツをはいて帰った僕を誰が責められようか。ああ下痢ってつらい。
良かった僕だけじゃないんだ!!!